ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

腹這いのまま顔だけ上向け、蜂須賀を見上げた兄貴は微動だにしない。

そりゃそうだ。


下手に動けば抗体をやられる。

けど、抗体をやられても蜂須賀からウィルスを奪えたなら……。



機動隊のうち数人は、蜂須賀に向かって銃を構えており、その中の一人がゆっくりと告げた。


「この建物は完全に包囲した。もうお前に逃げ場はない。無駄な抵抗はやめろ」



だが蜂須賀は、片口角をクイと上げてほくそ笑んだ。


そして、右手に握る銃の筒先は少女に向けたまま、反対の左肘をゆっくりと折る。持ち上げられた左手に握られているのは、試験管みたいな数本の細いガラス容器。



あれは……ウィルスか?



蜂須賀の足元にはパックリと口を開いたアタッシュケース。

間違いない、蜂須賀はあの中からウィルスを数本抜き取ったんだ。