「そうだよ、やめろよ『りっくん』」


俺も、もちろん多恵ちゃんに便乗。


「てめぇが『りっくん』って呼ぶな。不愉快極まりねぇわ」


こっちも不愉快極まりないですけど。

瀕死の大怪我して意識まで失って、ようやく目覚めれば、首絞められて味方であるはずの人間に殺されかかるし。



困惑した面持ちの多恵ちゃんの胸には、天使ちゃんが抱かれていた。多恵ちゃんの左肩に頭をチョコンと横向けてのせ、スヤスヤと眠っている。



未だ怒り冷めやらぬ野獣谷口は放っておいて、

「天使ちゃん、腹の具合どう？」

と、ずっと気になっていたことを多恵ちゃんに尋ねた。



この愛くるしい天使ちゃんが、野獣谷口の血を半分受け継いでいるなど、全く持って信じられない。


何かの間違いだ、多恵ちゃんは浮気をしたに違いない。