蜂須賀だ。 道理で見覚えがあるはずだ。 忘れるはずがない。死に損なった俺を見て苦々しく舌打ちし、そうして物も言わず去って行った背中だ、忘れる訳がない。 てか、すぐに思い出せよ、俺っ! 隣の谷口さんの左足に、俺の右足を小さく左右に動かしながら、他の奴等に気付かれないようコツコツと何度もぶつけた。 どうすんだよ? どうすんの? 谷口さん! 足の甲にガツンと踵を落とされ、俺の右足の左右運動は止まる。 というか動けなくなった。あまりの痛みで。