「いえ、たった今、眠り姫は完全なる覚醒を遂げました。王子のチューはもう必要ないです。ご心配おかけしてすみません」


声帯を圧迫されてかなり苦戦しながらも、必死になって声を出した。



「何が『スリーピング・ビューティー』だ、バカ皆人」


忌々しげに吐き捨てつつも、谷口さんは俺の首から手を離してくれた。



「てか谷口さん、怪我人になんてことすんだよ! 血も涙もない、野獣の姿をした鬼め」


開放されたらちょっとだけ強気になった。なので、勢い良く起き上がり、抗議してみる。



「野獣も鬼も大差ねぇわ」


谷口さんは冷静に突っ込んでくれた。

そこに気付いたか。良く出来ました。