ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「ほどほどにしとけ。死なせたら意味がない」

今度は背後から、さきほど聞いたばかりの、低いが透き通るような澄んだ声が龍一の耳に届く。


振り返れば、トレーラーの扉を開け、片足を踏み入れた状態の蜂須賀が、薄っすらと笑みを浮かべてこちらを見ていた。



「ああ、わかってるって。コノヤロー、てめぇのその重い身体を俺に運ばせる気か? ふざけんじゃねぇ、このブタがぁ」

仁科は軽い口調で答えると続けて罵言を吐き、左脚を後方に引いた。


少女の腹部めがけて、その爪先を前方へ振る。


が、目にもとまらぬ速さで仁科と少女の間に割り入った何かによって、それは食い止められる。



「っつ……」

苦痛に顔を歪め、仁科が左脛を抱えた。