生まれつき耳が聞こえない乃亜は、口の動きを見れば何を言っているかわかる。


謝らなくていい。皆人くんが無事でいてくれただけで充分。

乃亜は、そう伝えたかったんだ――と思う。



乃亜がそう言うなら、俺はいつもどおりふざけるさ。

愛の表現、俺流。



「俺の寝顔、可愛かった?」

乃亜が俺の寝顔なんかには見向きもせず、雑誌を読み耽っていたと知っていて、わざと聞いてやった。


現実なんて、そんなもん。

寝ている夫を眺め続けたところで、覚醒が早まる訳でもないしね。



うん、うん、と乃亜は頭を縦に振った。



嘘つきめ。