ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「全て予定通りだ。日の出前にここを出る、準備しろ」

蜂須賀は事務的に用件だけを中に居た者たちに告げると、思い出したように龍一に視線を寄越した。



「お前もここだ。言っとくが、妙な真似はすんなよ」

不敵に口の端を上げる。


その眼光は鈍く光り、笑顔とは程遠い、だが微笑みとしか言い表せない表情を、その端正な顔に浮かべた。



美しさがより一層、その不気味さを際立たせる。

漆原よりも危険な香りがする。

龍一の脳内で警笛が鳴り、それによって揺さぶられるような不快感に、龍一は無表情のまま耐えた。



右隣のトレーラーへ向かう漆原と蜂須賀の背中を眺めていると、

「おら、立てよ」

苛立たしげな声と共にボスッという鈍い音。



音に誘われるように龍一が反対側のトレーラーに視線をやれば、トレーラー脇に少女が腹部をかばうように身を丸めて横たわり、か細い呻き声を漏らしている。