運転手を務めていた仁科が、おもむろにトランクへと回り込み、流れるような動きでそれを開けると、中の『モノ』を引き摺り下ろす。


その乱暴な様に、思わず龍一は眉をひそめた。



『モノ』のうちの一つである『少女』は、聞いたこともない異国の言葉で弱々しく助けを乞うが、仁科はそれを愉しむように口角を上げるだけだった。



浅黒い肌、艶やかなストレートの腰まである黒髪。


クッキリとした瞳は際立って大きく、その顔の大半を占めているように錯覚するほど。

そのせいで幼く見えるが、その身体は『男』を例外なくそそる、しなやかさがあった。



が、どこか様子がおかしい。

その違和感に、龍一の胸の奥がざわつく。



皆人がバンの荷台で少女を見つけた時、彼女は大声で泣き喚いた。


明らかに仁科は、幼い少女ならば恐怖を抱くであろう容姿だ。
当然、『見た目は』当たり障りのない極一般的な大人の男のそれである皆人など、比べ物にならない。