ほんの一瞬の出来事だった。
俺の素晴らしい動体視力をもってしても、野獣谷口の動き全てを追うことができたという自信はない。
「なぁ兄ちゃん。あんたの敵はそいつらだけじゃねぇぜ」
蜂須賀が嘲笑まじりに言い、兄貴が俺に向けていた銃を、腕ごと水平に動かして方向変換し、谷口さんに狙いを定めた。
「だな。どうすっかなぁ~。取り敢えず、お前ら立てよ」
谷口さんは、なんら動じることなく、呻き声を漏らしている男たちに向かって軽い調子で言う。
何があろうとも、常に余裕ブッこいて、更には窮地を楽しんでいるかのようにふざける。
そこんとこが、猛烈に気に入らない。
この野獣に、弱点は無いのか? チッ。



