めいいっぱい膨らんだ大きなカバン。
アジャスターケース。

それらを上下に揺らしながら、少女は走っていた。


人ごみを縫い、できるだけぶつからないように注意を払いながら。

時間は平気なのか、ずっと気になって仕方が無い。
少女は学校の前に聳え立つ大きな時計を見上げた。

しかしその瞬間、一人の男に大きなカバンがぶつかった。


「いってぇ・・・。」


少女は気にしつつも足を止めることはできなかった。


「ごっ、御免なさい!!!」


とりあえず謝罪の言葉だけを述べ、また前を見て走った。



息も絶え絶えに階段を駆け上がり、教室へと向かう。
間に合うか?間に合わないか?

廊下にはすでに人気が無い。

おそらく教室では出席を取っているに違いない。
少女は自分の教室のドアを開けた。


「ツゲ。ツゲ ヒバリ!」


「はいはいはいっ!!!います!黄楊雲雀いますっ!!!」


ちょうど自分の名前が呼ばれ、雲雀は大きく手を上げた。

その姿にクラスの全員がクスクスと笑った。
教師は呆れ返って雲雀を困ったように見ていた。


「いいから席着け。二年になって早々これじゃあ、先が思いやられるな。」


雲雀は小さくなりながら自分の席に着席した。