見えない何かにずっと追われ続けている。

何に？



そう、それは・・・。








　少女の頭の中につんざくようなベルの音が鳴り響いた。
唸りながらも反射的に目標物を叩く。
三回叩いたところでやっとベルは止まった。

目標物というのは目覚まし時計。

少女はそれをちらと見る。

あと五分くらいなら眠れるだろう・・・。
そうしてもう一度浅い眠りにつこうとした瞬間、少女は目覚まし時計を手に取った。


「うそ・・・。」


自分の目を疑い、もう一度よく確かめる。
短針は八を指している？長針は六を指している？

つまり今は八時三十分？

一時間読み違えてはいないか、少女は携帯電話を取り、ディスプレイに表示されたデジタル時計を見た。



8:30


「やっばいっ！！！」


少女は急いで出かける準備をした。



歯磨きは学校ですればいい。
お風呂は・・・一日くらい入らなくても平気。
服は走りやすい格好ならなんでもいい！
ご飯を食べている暇なんて無い！

とにかく忘れ物が無く、遅刻にならなければ他のことなどどうだっていいのだ。


少女は大きな荷物を背負って部屋を出た。



今日は進学して最初の授業日。

遅刻するわけにはいかない。