黄楊雲雀の生活は一人の男のせいで大きく変わった。


男の名前は安城隼。
服飾技術科三年、年は22歳。

雲雀よりも年上で学年も上だ。


「俺のパシリになれ」という強制的な命令により、雲雀は今は隼の使いっ走りとして働いている。
それを条件に学生証を返してもらったのだ。
今さら手のひらを返すような真似はできない。


その上、隼には逆らえない何かがある。

文句の一つは愚か、愚痴さえ言えない。
雲雀は仕方なく隼のパシリになっていた。



しかしその内容といえば取るに足らないもので、ジュースを買ってこいだとかその程度の物だった。



今日も同様にくだらない雑用を押し付けられる。
いつものように呼び止められ、いつものように強引に連れて行かれる。



「安城先輩、あたし今日早めに帰りたいんですけど・・・。」


腕を引かれながら雲雀は小声で言った。
この人間に面と向かって言う勇気は無い。

遠慮がちに言っても隼は雲雀を睨みつけ、「すぐ済む」とだけ言って学食に連れていかれた。



学食の半分は課題が出来るように円形のテーブルがいくつも置かれていた。
朝や休み時間はそこで課題をやる人間も少なくは無い。


「お前、デザイン科やな?」


「そうですけど・・・。」


隼はテーブルに置かれた布を広げて言った。


「仮縫い手伝え。」


雲雀は肩を落とした。