放課後、雲雀は重い足取りで学食へと向かった。
重い荷物がいつもより重く感じられる。

学食内を見渡せば、何日か前と同じ所に男は座っていた。

雲雀は大きなため息をつき、渋々男の下へと歩いていった。


「あの・・・言われた通り来ました・・・。」


男はジロリと雲雀を睨むと目の前に拳を出した。
何かと思い戸惑っていれば、苛立ったように男が口を開く。


「手。」


「えっ？」


「手ぇ出せ言うとんねん。」


雲雀は訳も分からず両手を差し出した。

男の拳から雲雀の手のひらに無機質な金属が落ちる。


その正体は百円玉だった。


「いちごオレ。」


買ってこいという意味なのか・・・。


「あの・・・学生証・・・。」


「今、いちごオレが飲みたいんやけど。」


「・・・買ってきます。」


雲雀は内心“なんで自分が勝ってこなくてはならないのか”と思ったが、当然それを正面から言えるわけも無く・・・。

ただ言いなりになることしかできなかった。


おそらくこのお使いが済めば学生証は返してもらえるだろうし、ジュースを買いに行くだけなら容易いことだ。



雲雀は百円玉を自販機に入れ、いちごオレのボタンを押した。