畑から戻って来る頃には
もうお昼過ぎ
村も活気がでてきて魚売りや
八百屋の威勢のいい声が響く
今日のお昼御飯は
野菜と小魚にしよう、
凜はそう思って
魚売りに声をかけた
「魚やさん、
一番安いのはどれ?」
「お、凜ちゃんじゃねぇか
そうだなぁ、この小さいのは
安く売れるだろうけど
こんなんでいいんかい?」
魚売りは優しく凜に声をかけるが
凜は笑って断った
「うん、いいんだ
そんなに贅沢なものは
買えないからね」
「そうか…一匹だけか?」
「うん、一匹でお願い」
「いかんいかん
お前さんの母ちゃんは
体が弱いじゃろ!
ほら、おまけでもう一匹つけるから
母ちゃんに食べさせてあげな」
「わぁっ、ありがとう!
いつかきっと恩返しするから!」
「ええってことよ、
さ、早く行ってあげな」
「うん、おじさんありがとね!」
嬉しそうにかけていく凜を
魚売りは切なげな目で見送った
「あんなにいい
娘さんなのになぁ
ちったぁ贅沢な暮らし、
させてやりたいよ…」

