凜の父は
彼女が幼い頃から家におらず
凉も彼の話題を嫌った
凜はふとしたときに
父を想うことはあるが
母との会話に父があがることはない
二人の一日は朝日が差し込む前から
すでに始まっている
凜は体の弱い母のために
炊事、洗濯、掃除…
家の事はなんでもやった
今日も早起きな凜は
母が起き出す前に朝食を作り始める
もちろん、
豪華なものは食べられない
朝はいつも玄米と
少しの野菜と具のない味噌汁
それでも食べられるだけ
まだましだった
朝食を食べ終えて
さっと片付けを済ますと
凜は家の掃除を、
凉は仕事の機織りを始める
凉が織る布はきっちりとしていて
そのうえ肌触りもよい
几帳面な彼女の性格が
写しっ出されたような布であった
呉服屋でも結構な高値で売れ、
そのお金で二人は生活費をまかなっていた

