凜は帰る途中に紙が
貼り出されているのを見た
回りにはひとだかりが
できている
「山の神様が目をおさましに
なったらしい…」
「来年は豊作かねぇ」
「明日が楽しみだよ!」
ざわざわと騒がしいほど
人が集まり、それぞれで
しゃべっていた
「…今年は誰だろうか」
誰かがぼそっと呟いた
一瞬、空気がはりつめ、
みんなばつが悪そうな顔で
うつむいてしまう
「そりゃああたしらだって
神様から恩恵を受けてるんだ
これくらい当たり前さっ」
ひとりの女が言った
すぐに反論の声があがる
「当たり前だぁ?
実際に選ばれたらどーすんだ!?
泣いて悲しむ人を、もう
これ以上みたくねぇ…」
またしん、と
静かになる人だかり
「なにを言うておる!
もう昔のことじゃ、
今は形だけの祭…
儀式ではないからの
心配せんでもええ、
明日は素直に楽しむのが
一番じゃろ」
一人の老人がこう言うと
皆納得したのか
ひとりひとりと散りはじめ、
やがてほとんど誰もいなくなった

