三橋呉服屋もたくさんの人で
ごった返していた
凜はつま先立ちで
体をよじりながら
店の奥に進んだ
「ごめんくださーい!
お花さーん!
凜です!着物を持ってきました!」
凜が大きな声で呼び掛けると
店の奥から太った女性が出てきた
「あらあら凜ちゃん
遠いとこよくきたねぇ!
疲れたでしょう?
上がっていきなよ」
彼女は、三橋 花
三橋呉服屋の女将だ
年は四十過ぎ
ふくよかな体型に、
はつらつとした性格などから
みんなに好かれている
花は誰にでも優しい人だったが
とくに凜の事は本当の娘のように
可愛がってくれていた

