「あとさ、何か好きな物とか嫌いな物とかある?」
「特にない」
さっきから返事がテキトー。
新聞に集中してる?
ま、いっか。
好き嫌いもないらしいし、今から作りましょうか。
キッチンに行くと、フライパンや鍋、料理に必要なものは全部揃えられていた。
ものすごく綺麗なキッチン。
こんなところでわたしが料理なんかしても大丈夫?
ここ使われたことあるの?
っていうくらいに綺麗。
壁に油なんか跳ねてないし、水道なんか水垢がない。
そもそもあの男が料理なんかするのかな?
…………
もしかして…………
わたしは立派な冷蔵庫の中を開けて見てみた。
外は立派だけど、中は…………
ビールしか入っていなかった。
やっぱり。
ていうか、なんであの人は教えてくれなかったの?



