「わたしは谷村理恵-タニムラリエ-よ。理恵って呼んでいいわ。
今日は突然来てごめんなさいね?
それもこれも全部あいつのせいよ」
また出て来た、あいつ。
理恵さんは、気に喰わないような顔をしてるけど、一体どんな人なんだろう?
それに………
「あの……、どうして名前を教えてくれたんですか?」
多分この人と会うのは今日だけだ。いつも新しいところに連れて行く人達もそうだった。
そのため、相手も名前を言わなかったし、わたしも聞かなくても支障はなかった。
だから、名前を教えてくれたことを不思議に思った。
「名前?
あぁ……、多分これから長い付き合いになりそうだから、言っとかないと不憫でしょ」
「そうですか」
その答えに納得しなかったけど、一応そう言った。
長い付き合い……か。
これから行くところには、そんなに長く居られるのかな。
そんなこと絶対無理。
一、二年だったら、有り得るかもしれないけど、数十年同じところにいることはない。
だって、今までがそうだったし。



