「は、はじめまして。
私、正院高校一年三組の花井夏と申します」

花井夏がペコリと可愛らしく頭を下げる。

背が小さいから中学生かと思ってたが、どうやらうちの高校の一年らしい。

「ああ、どうも」

俺もつられて頭を下げると、彼女は小首を傾げニコニコと俺を見上げてきた。

どう反応を返していいか分からず、逆向きに首を傾げ引きつった笑顔を返す。

しばらく俺達の間にフワフワした妙な空気が流れたが、先に口を開いたのは夏の方だった。

「もしかして、片桐先輩、アンナちゃんに会いにいらっしゃいましたの?」

探るように上目遣いで尋ねてくる。

「は?」

なんでアンナなんだよ?

俺はムッとして眉を寄せた。

「いや、俺は森口に……」

「カンナちゃんに!」

とたんに夏はなぜか目をキラキラ……と言うよりギラギラさせて、鼻息も荒く俺に近づいてきた。

「中に入れて差しあげましょうか?」

ガシッと俺の腕をつかみ、見上げてくる。

「カンナちゃんに一目会いたいといらっしゃったんでしょ?
でも家元に邪魔されてるんですよね?
私がこっそり中に入れて差しあげましょうか!?」

夏の有無を言わせない迫力に

「は?
え?いや、一目っていうか」

戸惑ったまま答えを返せないでいると、

「会いたいんか、会いたくないんか、どっちじゃワレ!
男ならはっきりせいや!」

夏は突如般若に変貌を遂げてドスのきいた声でそう言いながら、俺の首を締め上げできた。