俺はガタンと椅子から立ち上がると、ヤスを放置して教室を出た。

廊下をブラブラ歩いていたが、ふと思いついて踵を返した。

階段を上り、別棟に続く渡り廊下を進む。

めったに行くことのない図書室に入り、パソコンの使用許可を取った。

電源を入れネットに繋ぐ。

『藤森流』

と検索をかけ、ランダムに中を開いた。

わかったのは、藤森流が200年つづく名門中の名門だってこと。

あの凶暴なばーさんは藤森知影という芸名の女優で、藤森アンナは今でこそ芸能活動を休止しているが、子役時代は各賞を総なめにした天才子役だったらしいこと。

いろいろと華々しい一門の活躍が書かれていたけど、森口のことはいくら検索しても、ヒットする項目はなかった。

ふぅっと息をはいて、パソコンの電源を落とす。

立ち上がって使用許可証を返却しようとカウンターに目を向けた俺は、そこに森口の姿を見つけた。

何冊か本を腕に抱え、書架の間に消えていく。

俺は無意識に彼女の後を追っていた。


書架の奥に進むと机が窓際に置いてあり、そこは読書スペースになっていて。

森口は椅子に座ると、本をめくり出した。

少し空いた窓から、風が流れ込んで彼女の前髪を揺らす。

差し込んだ日に照らされた彼女は、ただのダサいミツアミ眼鏡なのに。

俺は眩しいものを見たように、目を細めてしまった。

くそ。

なんだよ。

なんでこんなにドキドキしてんだよ。