「君はカンナちゃんが好きなのかな?」

「はあ!?」

わけがわからなくて声を上げる。

なんなんだコイツ。

なんで今の会話でそこまで話が飛躍するんだ。

妄想好きのむっつり助平だからか?

頭の中妄想でやられてんじゃねーの?

無駄に爽やかぶるから、脳内は大変なんだな。

と、心の中で密かに同情していると松宮はさらりと髪をかきあげて小さく息を吐いた。

「彼女は藤森……アンナ。
日本舞踊宗家藤森流の継承者だよ」

「藤森?
森口の、ねぇちゃんじゃないのかよ?」


松宮は俺の問いには答えず、

「………君ならわかるのかな」

ぽつんと不可解な言葉を残して立ち去っていった。


何なんだあいつは。

最初から最後まで訳がわからん。


なんとなくすっきりしない気分のまま、俺は頭を乱暴にかいて歩き出した。