キミは嘘つき蝶々

「頭が良くて」

「運動神経抜群で」

「優しくて面倒見が良くて」

「エロいことなんか一切考えてなさそうな、草食系男子!!」

とかなんとか。

んな、オトコいてたまるか!!

男の頭からエロ抜いたら八割カラっぽだっつ-の。

松宮だって爽やか面の裏で、どんな妄想繰り広げてるかわかったもんじゃない。

妄想の相手が森口だったら殺すけど。

「で、俺に何か用ですか?」

急になぜかムカムカしてきて、松宮を睨む。

松宮は困ったように微笑んで、俺の抱えたカバンを指差した。

「それ、カンナちゃんのカバンだよね?」

「は?」

顔を歪めつつ、自分の腕に抱えたままのカバンを見下ろす。

有り得ないくらいに厚みがあるそれは、確かに森口のもので。

さっきばーさんに襲撃に遭ったせいで、返しそびれたままになっていたようだ。

「僕が、返しておくよ」

「べつに、頼んでねーけど」

いかにも親切そうな笑顔で近づいてくる松宮から、距離をとる。

そのままじりじりと間合いを計りながら睨み合いを(松宮は気味の悪い笑顔のままだったが)続けていると、さっきの着物姿の美少女が急に声を上げた。

「あ!!アンナちゃん!!」

たたたっと彼女が森口宅の門へと、駆け出す。

つられて振り返った俺は、呆然とそこに立っている人物を見つめた。