「きゃっ」

前触れなく、森口がこけた。

ちょっ。

なんで何にもないのに、こけるんだよ!?

慌てて鞄を投げだし、受け止める。

軽い衝撃と共に森口の細い身体がすっぽりと腕の中に納まった。

お互いの体温が重なり合う。

ふわりと甘い香りが鼻を掠めた。

「………」


………嘘だろ。

勘弁してくれよ。


「ご、ごめんなさい!!」

わたわたと、森口が身を起こす。

「片桐くん?あの手を、離し……」

真っ赤に染まった顔で森口が、俺の腕から逃れるように身をよじった。



マジで、勘弁してくれよ

……こんなの。




離れようとする森口の背中に腕を回し、おもいっきり強く抱きしめる。

「きゃあ!?」

悲鳴をあげる森口を無視して、俺は彼女の肩に顔を埋めた。



こんな体勢で

理性が、保てるワケねーだろが!

こんちくしょー!!