昇降口の下駄箱に寄り掛かり、俺はイライラと腕時計を見た。

ここで待つこと20分。

目当ての人物は、なかなか現れなかった。

「なに、やってんだよ」

顔を歪め、ざわざわ騒がしい廊下に目を向ける。

次々に階段から吐き出されてくる、帰り支度をすませた生徒の中に、森口の姿はない。

鞄に教科書詰めてるところを確認してから教室を出て来たのに。

出てくんの遅すぎんじゃねーか?

ちっと舌打ちする。

待ち合わせしたわけではなく、一方的に待ち伏せてるだけなのだが。

俺は何故か、すっぽかされた気分で床を蹴った。

「ひーろーくん♪待ったあ?」

顔をあげる。

手を挙げ、オカマ走りをしながら、ヤスが駆け寄って来ていた。

俺の前で立ち止まり、可愛く小首を傾げる。

「か・え・ろ?」

…………気持ち悪い。


「一人で帰れ」

冷たく告げると、グラスハートなヤスは、泣きながら上履きのまま帰って行った。

本当に取り返しのつかない馬鹿だな。