……無視かよ


筋違いだとわかっているのに、何だか気にいらなくて、イライラした。

ヤスの声は必要以上に大きい。

俺達の会話は森口にも丸聞こえだったはずだ。


………聞こえないふりなんかすんなよ。


窓枠に区切られた、皐月晴れの空に視線をむけ、眉を寄せる。

仮にも

この、俺様が。

ひと月に五人は女がコクりに来る、片桐ヒロ様が

お前のこと好きかもしれないって、頭の悪い金髪が騒いでんだぞ?

もう少し、なんか反応しろよ。

赤くなるとか、見つめるとか、恥ずかしそうにするとかさ。

まあ、あのどでかい眼鏡の下の表情を、読み取るなんて容易には無理かもしんないけど。