「ここなら大丈夫かな?」

松宮がそう言って俺を促したのは、三階にある生徒会室だった。

鍵を差し込みドアを開ける。

中はすっきりと片付いていて、応接セットと長机が中央に三台、壁際にはいくつかの書棚が並べられていた。

「まあ座って」

すすめられたソファーは、革張りで結構すわり心地がいい。

生徒会め。贅沢してんな。

内心舌打ちしながら、俺は足を組んでふんぞり返った。

「で、話ってなんだよ」

不遜な態度でそう聞くと松宮は苦笑して、俺の前の一人かけのソファに腰を下ろした。

「話があるのはキミの方なんじゃないのかな?片桐君」

細められた瞳には微笑みはあれど敵意のかけらもない。

なんだか自分ばっかりが無駄に威嚇しているみたいで、軽く恥ずかしくなった俺は少し頬を赤らめてソファに座りなおした。

「……一つ聞きたいんだけど」

こほんと咳払いして、口を開く。

「森口と……」

「うん?」

「婚約したって本当かよ?」

一気にそう聞くと、松宮はきょとんとした顔で俺を見て、ぱちぱちと瞬きした。

「早耳だね。
カンナちゃんに聞いたの?」

それは明らかな肯定で。

ずんと腹の奥に重りを載せられたような気分になる。