「だーかーらー離せって!!」

「いやーんヒロ!!YASUを一人にしないで。
俺たちコンビじゃん。二人で一つじゃん。
てか、一心同体じゃーん!!」

「気持ちの悪いこと言うなあああああ!!!」

翌日の昼休み。

相変わらず俺を避けている森口を探して、教室を出ようとしていた俺は、これまた相変わらずヤスに絡まれていた。

「ちょっと!!ヤス!!
ヒロから離れなさいよ!!」

キィッと美佳が整えた眉をあげ、凶器の赤い爪でヤスをひっかく。

ヤスは顔についた赤い跡を抑えて

「いったああああああ、でもきもちいいいいいいっ。
美佳ちゃん、もっとおおおおおっ」

叫びながらゾンビのように美佳に迫っていった。

「ぎゃあああああ、変態!!寄らないで!!」

おびえた美佳が机を盾にして、身を隠す。

ぎゃあぎゃあと騒がしいその様子を、クラスメイトは遠巻きに生暖かい目で見ていた。

いつものこととは言え頭が痛い。

はあああっと心からのため息をつき、俺はバカ二人を置いて歩き出した。

途端、

「いやーん行かないでええええ」

バカ二人の体重が俺にのしかかる。

「うぐっ、ばっ重い!!離せっ」

必死に振り払おうとした俺はくすっと言う耳障りな笑い声に気付いて顔を上げた。

「……松宮」

教室のドアの前に立つ人物に気付いて、眉をひそめる。

「やあ」

松宮は挨拶するように片手を挙げると、小首を傾げてさわやかな笑顔を浮かべた。

「お盛んだね」

嫌味というよりは、素直にそう思ってそうな松宮の口調にピキッと額に青筋が立つのを感じた。