確かに

レイナが言うように、彼女は森口の一面なのかもしれない。

俺は森口のことを何も知らない。

イメージだけを押し付けて、森口はこうじゃないって思い込んでいるのかもしれない。

そうは思えど理解までには到らず、

『私はカンナが恋をしたから生まれたの』

結局、単純な俺の頭は、レイナのこの一言に占拠されていた。


恋をした?

森口が?

ダレに?

お、俺に?

い、いやまて俺。

期待のしすぎは身を滅ぼすぞ。

松宮と向き合いながら顔を赤くしていた森口が頭を過る。

もしかしたら、ムッツリ松宮?

それとも別の誰かに?

「あー!!!」

ぐるぐるする頭を叫びながら横にふる。

俺は呼吸を整え、目をぱちくりしているレイナを見上げた。

「も、森口は、誰が好きなんだよ?」

ドキドキしながら尋ねる。

レイナはじっと俺を見詰め、ふぅぅーっと長い溜め息を漏らした。

「……やっぱり、見たいことしか見ない……」

小さい声で呆れたようにそう言ってレイナは机を降りた。

そのまま俺の横を通りすぎ立ち去ろうとする。

俺は慌てて彼女の腕をつかんだ。

「待てよ。
話がまだ………」

言いかけた俺の言葉に被せるように、レイナは振り返って口を開いた。

「ねぇ片桐くん。もう一度聞くわ。
森口カンナが好き?」