「だから男の子って馬鹿なのよ。
自分の見たいことしか見てないんですもの」

クスクスと肩を揺らしながら、レイナは俺から離れると机に腰掛け、高く足を組んだ。

ぱ、パンツ見えるぞ。

「純情可憐な汚れなきお嬢様なんてこの世にいないわ。
そんなの男の下らない妄想よ」

ふっと嘲るように唇を上げて、レイナは膝の上に頬杖をついた。

ふわりとレイナの髪が風に広がる。

森口って、やっぱり眼鏡外すと綺麗な顔してんだな、と今さらのように思う。

派手じゃないけど、上品でバランスがいい。

別にダサ眼鏡も嫌いじゃないけどさ。

なんて。

ボケーッと見とれている俺に、レイナは衝撃の一言をぶつけた。

「私はね。カンナが恋をしたから生まれたの」

「………は?」

森口がこ、恋?

え?えええ?

「でも恋愛は妖怪バハアに禁止されてたし。
カンナはバハアに逆らうことなんてできない臆病者だからね。
ずっと自分の気持ちに気づかないフリしてた。
全部胸に押し込めて消してしまおうとしてた。
それでも、知らないうちに溢れる気持ちを、押さえるなんて無理だったのよ。
好き、そばにいたい。
誰にも近づかないで。
自分をみてほしい。
自分だけをみてほしい。
恋なんて綺麗な感情ばかりじゃないわ。
ドロドロした嫉妬も独占欲も欲情だって生まれる。
カンナはそれを自分で受け止められなかったの。
だから私を切り離した。
バハアの言いなりになるイイコでいたいばっかりにね」

レイナは不満げに眉をしかめて、髪をかきあげると俺を見た。

「確かにカンナは大人しくて引っ込み思案かもしれないけど。
それは貴方がみてるあのコの一面でしかないわ。
私はカンナの恋する気持ちそのものなんだから」