その男は

マザー・アミコたちが白い車から降りたときから、反対車線の歩道に立ち

彼女たちを意識しないふりをして、しっかりと自分の視界に捉えていた。


男は、その顔を彼女たちの方へ向けることなく

モノの本質を鋭く見抜くような視線だけを、彼女たちにチラッと送る。

そんな彼の存在に、マザー・アミコは気づかない。


そして、男はまだ火のついていないタバコを片手に

マザー・アミコが乗り込んだ黒い車を、目で追いかけるのだった。