私は何故、こんな世界で生き続けなければならないのだろう。



2nd episode ―彼女と死神―



彼女は今、飛び降りる覚悟で歩道橋の上に佇んでいる。死のうとしても無駄だということは分かっているが、どうにもこの世界で生き続けることに耐えられないのだ。彼女は意を決して柵を掴む手に力を込める。

「何してるの!?」

強い力で肩を引っ張られ、彼女の手は柵から引き剥がされた。彼女が驚愕の表情で後ろを振り返ると、同い年くらいの少女が息を切らし、彼女の肩を掴んでいた。察するに、彼女が飛び降りようとしているところを目撃したこの少女は、目撃したところから走ってきて彼女を止めたということだろう。

「……どうして」

彼女は消え入りそうな声で呟いた。

「だって、目の前で死のうとしてる人がいたら止めるでしょ、普通」

屈託なく笑う少女を見て、彼女は泣き崩れた。

「だから言っただろう。お前は死ねないと」

彼女の耳元で男の声が囁いた。彼女がこの男と出会ったのはほんの数カ月前のことである。