そんな私の肩を抱き、起こしてくれたのは、一つ下の弟だった。

私は結局、最後の別れの言葉なんて言えなかった。


笠井の遺体が霊柩車に乗せられた。
私達は外で見送った。
クラクションが鳴り響く中で、笠井の教え子達が、
『整列!礼!ありがとうございましたー』
と言った。
私達は、ただただ笠井笠井と叫びながら地面に座りこむしかなかった。

最後は家族だけで…という事で火葬場には身内の人達だけで行かれた


私達は告別式の会場のロビーで、みんな黙ったまま、時間を過ごした。

でも、ここで待ってても迷惑かかるだけだから帰ろうと誰かが言い、私達は皆、家路についた。


帰りの車の中、誰一人喋る人がいなかった。

みんな黙ったまま外を眺め、火葬場の方に見えた、けむりに手を合わせ、いつまでもいつまでも、けむりが見えなくなるまで、見ていた。