亡國の孤城 『心の色』(外伝)





………目の前の勝利を、掴むか。




………否か。

















………微笑を浮かべる彼女をぎろりと睨み続け、アベルはとうとう………己のキングに、手を伸ばした。




アベルの掴んだ指先でフワリと数ミリ浮いたキングは滑る様に盤上を歩き………そして………。























「―――………舐めんな、ギロチン女…」





















―――カツン、と………軽い音を立てて……………………………………一マス、後退した。


















………敵のキングを目の前にしてその首を刎ねる事無く、アベルは………距離を、置いた。



自然に。


当たり前であるかの様に。





















………出来てしまった、一マスという互いの距離を見下ろし……。



「―――………あら。………意外ね」


…と、予想外の行動に出たアベルにちょっとだけ驚いて、リネットは呟いた。

キングを置き終わり、ふんっ、と不機嫌な様子で頬杖を突くアベル。




「………………私に似て負けず嫌いの貴方の事だから………あっという間に取り去るかと思っていましたわ。………屈辱を受ける前に逃げる準備をしていましたのに」

「……ふざけんなてめぇ。………おい、いいか?………お前がどうこう言おうがな………知った事じゃねぇんだよ……」



怒気を含んだ低い声音でアベルは言った。