「………ある意味、愚かかもしれませんわ。愛のためにだなんて。………………でも私は………そんなお父様が好きでしたわ。………何と言うか……いつも哀しい笑顔を浮かべていらして……可哀相でしたの」
「………」
………何処か憂鬱な表情を浮かべる彼女を眺めながら、アベルは駒を進めた。
「………信用出来る殿方はお父様だけ。……そのお父様も亡くなられてしまったけれど…。………………もう良いですわ……」
リネットは背も垂れから身体を起こすや否や嘲笑を浮かべ、ナイトを引っ掴んで敵陣に突っ込んだ。
……慎重な彼女らしくない大胆不敵な出方に、アベルは眉をひそめる。
そんな少年の反応を楽しむかの様に、リネットは頬杖を突いて何とも不敵な、意地の悪い……それでいて可憐に微笑んだ。
「……何だこのナイトは……………捨て駒か…?」
「………………何だと思われる?………捨て駒か…それとも罠か…。………………フフッ…貴方がどんな殿方か試したくなりましたの…」
どんな殿方って…。
呆れた顔でアベルは更に眉間のしわを深くさせた。
怪訝に思いながらも、リネットの置いたナイトを容赦無く取っていく。
するとリネットは、また………無謀としか言えない様な駒の置き方をしてきた。
彼女の駒はことごとく自殺行為に走っている。
………本当に、何なんだ。
「………殿方というものは……勝ちを目の前にすると、すぐ手を伸ばすものですのよ。………無駄に高いプライド故に、下らない利己主義故に。………それが典型的な……私が見てきた殿方………」


