亡國の孤城 『心の色』(外伝)



転がり落ちていく彼の姿がよく見えなくなった時、アベルは何事も無かったかの様に踵を返して階段を上り始めた。


リネットはそっと階下を見下ろし、大の字になってのびてしまっている男の生存を確認すると、アベルの後に続いた。


彼の真後ろを歩きながら、リネットは苦笑を浮かべる。

「………まさか、貴方があんな大胆な行動に出るとは思いませんでしたわ。……打ち所が悪ければ亡くなっていたかもしれませんのに」

「………この城の床に敷き詰められている絨毯は無駄に厚いからな。……ちょっとやそっとじゃ死なねぇよ…」



………相変わらず、面倒臭そうに淡々と喋るアベルだったが………その声は何処か怒気を含んでいる様に感じた。

……なんだか機嫌が悪い様だ。

………いつものことだが。






「………さすがの貴方も、あの自己中さに、頭にきたのかしら?」

「………………………………時間が無い。……とっとと終わらせるぞ…」