亡國の孤城 『心の色』(外伝)




王子様が別れ際に言った告白が無ければ、お姫様は彼を追いかけやしなかっただろう。

彼の言葉が、彼女をつき動かしたのだろう。

その心を揺るがす感情を、私は知らない。
客観視しか出来ない冷めた私の目には、おとぎ話はおとぎ話にしか映らない。

人間なんて単純。


そんな単純な自分を、いつか……見てみたい。

感動というものを、知りたい。







ああ……私はやっぱり……冷めた人間ね。






………ぼんやりと物思いに耽りながら、リネットは正面でやたらペチャクチャと話し掛けてくる……もう何人目か分からない差し金の少年を視界の隅に置いて無視していた。


あら、もう三時だわ。お茶の時間ね。………今日はアベルの坊やが来るんだったかしら?

…現在、チェスの戦績はリネットが八勝。アベルが九勝。

………今が決戦の時。今日のチェスで負ければ、あのアベルに有り得ない台詞を吐かねばならない。

……絶対阻止。


正直な話、こんな差し金の少年など放置して独り黙々とチェスの戦略を考えながら精神統一したいところなのだが。




………が、今回のこの正面の差し金……いつもの毒舌で切り捨てたい所なのだが、リネットが話を切り出そうとするとすぐペチャクチャと話始める。そしてこれがまた長く、絶えない。

人の話を聞こうとしないこの少年に、リネットは珍しく手間取っていた。


さすがの別名ギロチンの毒舌も、話すタイミングが無ければどうしようも無い。





………………ウザいわ。