―――僕は、貴女が好きです。とてもとても好きです。
財産や地位なんて要りません。ただ、貴女が好きなのです。
だから、僕は行きます。
僕が行く理由は、それだけです。それだけなのです。
そう言うと、王子様は一輪の赤い花をお姫様に渡しました。
大して綺麗でもない、何処にでもある様な、赤い花でした。
死の世界に咲く花と比べれば、全然美しくない花です。
王子様は言いました。
―――それは、代わりの花です。死の世界の花を僕が取って来るまでの、代わりの花です。
持っていて下さい。
僕が戻るまで、持っていて下さい。
そして王子様は、死の世界への扉を潜って、行ってしまいました。
それから何日も、何十日も過ぎましたが、王子様は戻ってきませんでした。
王子様は、二度と、戻ってきませんでした。
お姫様は、待っていました。
すっかり枯れてしまった花を手に、ずっと待っていました。
王子様が戻って来ないのが、悲しくて、悲しくて、寂しくて。
もう会えないのだろうか、と耐え切れなくなったお姫様は、王子様を追って、死の世界への扉を潜って行きました。
待つのはもう嫌でした。
だから、お姫様は追いかけて行きました。
王子様の言葉が忘れられなくて、追いかけて行きました。


