咳が治まってきたアベルは、ゆっくりとソファに座り直した。
「……………お前…心配してるのか?…珍しいとか言う前に気持ち悪いな……」
「…病人を心配しちゃいけないのかしら」
相変わらず口の悪い彼に、リネットは眉をひそめた。
「………言われなくてものんでるさ。………医者の話じゃ、だいぶ治ってきているらしい。………この忌々しい咳が無くなってきたら、完治だとよ」
「……あら、良かったわね」
そんな話をポツポツとしていると、召使の一人がリネットを呼びに来た。
………本日の差し金二号がやってきたらしい。
アベルも帰ろうとしていたので、ちょうど良かった。
すぐ行くわ、と答えた後、リネットはチェス盤をテーブルの端に置いた。
「………さて……楽しい楽しいいじめの時間ね。………まずは物語から聞かせなくては……」
恐ろしい事を言いながら立ち上がるリネットに、アベルは首を傾げた。
「………その毎度話している物語ってのは何だよ。………………お前が与える試験と関係あるのか?」
「………ベタな物語よ。あら………聞いた事無いの?……お姫様を巡る三人の馬鹿な王子の話よ…」


