「………そう言えば……ここに来る途中、城のベランダから人が飛び降りてぶら下がっているのが見えたぞ」
「………ああ……なんとか…って殿方よ。午前中にいらしたお母様の差し金。………ああ…気が重いわ………明日も差し金が来るみたいですもの…」
げんなりとしながらリネットは息を吐いた。
火の輪潜りにバンジー……そろそろネタが尽きてきた。
………そうだ……何も場所は城内に限らない。側の湖を活用しようかしら。
「………お前、追っ払ってばかりだな」
「嫌いですもの。殿方は」
と言って、やや苛立つリネットはルークを移動させた。
「………その大嫌いな殿方と…よくチェスが出来るな」
苦笑を浮かべて言うアベルに、リネットはパッと視線を移した。
「………貴方も殿方だけれど………少し違いますわ。………………貴方は『殿方』ではなく………………『好敵手』ですわ」
「………ああ…そう………そりゃあ光栄だね………っと」
トン…と、何気なくアベルが置いたナイトは………いつの間にか、リネットのキングを掴まえていた。
………リネットは苦虫をかみつぶした様な表情を浮かべた。
そんな悔しそうな彼女を前にせせら笑うアベルは、意地の悪い笑みを浮かべて呟いた。
「………チェックメイト。これで俺は八勝……あんたは七勝。………………屈辱の罰ゲームまであと少しだな?お姫様…」
「………」
普通にチェスをやるだけでは楽しくない。なので、先に十勝した方が勝ち。負けた方は……屈辱の罰ゲームとやらが待っている。


