亡國の孤城 『心の色』(外伝)



パシーン、と大臣の禿頭を扇子で叩き、リネットは物凄い速さで駒を元の配置に戻していった。

そして大臣が掴んだナイトではなく、普通のポーンを掴み………………ガツン、と一歩前へ進めた。


「………この伏線が既に張られた戦場を攻略する術は……意味のある、猪突猛進。………犠牲は出るでしょうが………充分、相手の罠を掻き回せますわ…」

………と、リネットは鋭い眼光を投げ付けた。

大臣はいつの間にかリネットに席を譲り、ソファの後ろで周りに「あんた頑張ったよ」…と励まされながら泣いていた。





……目に見えない火花が散る二人の睨み合い。




アベルはちらりとチェス盤を一瞥した。






………リネットの言う通り、ナイトを出して来たらそのままズルズルと相手のキングの守りを薄くさせていくつもりだった。


…だが、今この瞬間、一つの伏線が無駄になった。





張り巡らしていた罠の糸が………鋭利な刃で断たれていく。



















…これは、少し本気を出さねば………勝てない。




……………にやりと、アベルは口元を歪ませた。

好敵手を見つけた、と闘争心が揺れ動いた。



「………………ぶった切りやがって……」




















それに応える様に、リネットは開いた扇子の内側で静かに微笑んだ。



















「………あら。…………………だって、ギロチンだもの」