おぼつかない大臣の手がナイトを掴み、前進しようとした途端………見ていられなくなったリネットが脇からその手を掴んだ。
―――瞬間、その場にいた全員が目を丸くして驚嘆の声を上げた。
「――ひ、姫様…!?」
「いつからそこに!?」
あわわわ…と慌て出す大臣ら。
向かいのアベルも、リネットの突然の出現にやや驚いた様だが……すぐに不機嫌そうな表情に戻った。
リネットは大臣の手からナイトを奪い、元の位置に勢いよく戻した。
「……リネット姫様…!………一体何を…!!」
「………ルークよ…」
「………………は?」
呆気にとられる大臣に、リネットは扇子を突き付けた。
「………貴方の目は針穴以下ね!!よくご覧なさいな!!今ここでナイトを前に出せば、相手のポーンに左右を囲まれるでしょう!!そうなれば貴方はこちらに出るしかない!!犠牲を払いながら他のポーンを前へ出して行く!!そうすると………相手のルークは陣地に難無く入れるではないの!!」
どうして分からないの!?、と激しく叱咤しながら勝手に駒を動かして説明するリネット。
大臣は震えながら何度も頷き、周りもほうほうと感心して聞いていた。
………アベルは頬杖を突いたまま……リネットによって変わって行くチェス盤をじっと見詰めていた。
「陣地に入って来たルークを消すには、キング自らが取りに行くしかないでしょう!!そしてやむを得ずルークを取りに行ったキングの延長線に……ご覧なさい!!相手のクイーンの攻撃範囲内よ!!次のターンでチェックメイトよ!!」


