亡國の孤城 『心の色』(外伝)


そう思いながら視線をテーブルに移すと………そこにあったのは白と黒の小さな戦場…チェス盤だった。



さっさと帰るよりちょっと遊んで帰ろうとでも思ったのだろうか。暇そうな大臣を捕まえて強引にチェスをさせたに違いないが………それにしても皆やけに真剣だ。

アベルの向かいの大臣は、さっきから汗を拭ってばかり。
パッと見た感じでは、アベル少年が優勢と見た。



(………)

幸い、皆チェス盤に夢中だ。リネットはそっと室内に滑り込み、そろりそろりと彼等の背後に回り込んだ。

…劣勢であるらしい大臣が腰掛けるソファの後ろに身を潜め、ゆっくりそこからチェス盤を覗いた。






(………ふーん…)













……二人の対戦は、まだまだ序盤であった。しかし………もう既に、アベルが優勢。

大臣がどの駒を動かそうが、全て潰されてしまう様な………何とも見事な配置だった。

大臣のキングはがっちりと固められ、守られている筈なのに、アベルの駒は容赦無く…そして思いがけない所から出てくる。

大臣が一つ駒を動かせば、間髪を入れずアベルは駒を進めてくる。
何処に出せば優勢か、すぐに潰せるか……彼の頭には何百通りもその答えがあるに違いない。


















―――この男、出来る。













多分、この戦い…。五分も保たないだろう。
攻めて攻めて攻めてくるアベルに対し、大臣は慎重になり過ぎて駄目だ。








(………ああ…どうしてそこに出すのかしら……)

大臣の役に立たない…ある意味駒の無駄使いに苛立つリネット。