いつもなら差し金と面会した後、一日中苛々しっぱなしなのだが、今日は別だった。むしろ、何とも晴れ晴れとした……例えて言うなら、お菓子のクジで当たりが出た時の様な細やかな喜びに似た妙な感情が湧いていたりするリネットだった。
(………面白いものが見れたわ。……なるほど、なかなか味のある殿方も世間にはいるものね………)
今夜はそれなりによく眠れそう、とか色々と物思いに耽っていると…。
普段はあまり人気の無い一階の応接間から、数人の話し声が聞こえてきた。
……本日第2の差し金でもいるのだろうか。ならば、面会の時間などという面倒な段取りを決められる前に、早い所追っ払ってしまおう。
パチパチと扇子を開けたり閉じたりしながら、リネットは階下に降りた。
…応接間の扉は本の少しだけ空いており、その隙間から話し声が漏れていた。
隙間から差し込む室内の光にそっと視線を重ね、その先を見据えると………そこには…。
(………………何の真似かしら…)
眉をひそめるリネットの瞳に映ったのは、そう……数分前に『帰ります宣言』をした筈のアベルだった。
やや青白い整った顔は、リネットを睨んでいた時の悪相とは違い、今はキリリとした真剣な表情だった。
シャンデリアの下でソファに座る彼は足を組み、頬杖を突いてテーブルをじっと見つめていた。彼の向かい側には、汗をかきながら同じくテーブルを睨んで呻く一人の大臣。
この二人を囲む様に、他の大臣も腕を組んでテーブルを見下ろしていた。
………いい大人と子供が馬鹿みたいに真剣な面をして……何をしているのかしら。


