何とも意地の悪い嘲笑を浮かべ、アベルはリネットを一瞥した。
本の一瞬だけ、宿す光は違うが互角の鋭さを持つ双方の視線が交わった。
―――……あら、面白い。
扇子の内で、リネットはニヤリと静かに笑った。
新しい玩具を見つけた時の子供の気持ちとは…多分こんなものなのだろう。
「も…申し訳御座いません姫様!死んでお詫び致します!!……アベルちゃ…ア、アベル!!ほら、早く御挨拶なさい!!」
なんだかもう死にそうな夫人に泣いてせがまれ、アベルはかなり嫌そうな顔で再度リネットに向き合ってきた。
……そして。
「―――…名前、アベル。帰ります。くたばれギロチン」
言うや否や、アベルは踵を返してさっさと階段を降りて行った。
数秒の間を空けて、我が子に置いてけぼりを食らった顔面蒼白の夫婦が、物凄い速さでリネットの前で跪き、「死んでお詫びします!」と死に物狂いで詫びてきた。


