………中にはアベルの様に、嫌々ながらという者もいる。
オーウェンもその一人だったが、彼は演技でも何でも無くエルシアを本当に好きになったので話は別だ。
アベルに関しては………もう、面倒臭いとしか思っていない様で…。
…初対面からそれはあからさまだった。
………そう、あれは………半年以上前……正確には十ヶ月前だったか。
「―――うるっせぇなババア。年下の女一人にどうして頭を下げねぇといけないんだよ」
………コール家との、初の面会の際に、不機嫌なリネットを前にしながら彼が母親にぼやいた台詞である。
この瞬間、応接間は凍り付いた。
さっさと追っ払って紅茶でも飲もう、そうしよう、と構えていたリネットだったが………なんと向こうの方からさっさとずらかる…と言うのだ。
これにはリネットもやや驚いた。
どんな展開になるのかしら…と、扇子で口元を隠したまま、事の成り行きを面白そうに見守るリネットの前で、愉快なコール家は勝手に家族会議を開き始めた。
「………ア……アベルちゃん!!何ですかその口は!!あんなにお願いしたのにどうして手筈通り決めた台詞を言ってくれないの!!」
さっきまで愛想笑いを浮かべていたコール夫人は、直後、滝の様な汗を流してわたわたと慌て始めた。
「……台詞?…んなもん忘れた。つーかそのアベル『ちゃん』、は止めろよ。いい加減子離れしやがれ親馬鹿」
「アベル!!姫様の前で何と無礼な……!!」
「姫様?………ああ、この小娘が噂の…『ギロチン女』か。………その毒舌で切られた男は数知れず…ってな」


