波紋の様に幾重も広がる衝撃波を全身に浴びながら、バレンは純白に輝く神々しい城を睨んだ。
その光景は異様で、城はまるで………生きているかの様な…。
……生命力の塊、万物の象徴。
この国を貴べる……城。
…悍ましい。
あそこにさっきまでいたのかと思うと、身震いしてしまう。
「………………?………クライブ…!」
世界が揺れる。風に薙ぎ倒されていく。
そんな壮大な光景の中で、何処からか濃い闇の気配を感じた。
“闇溶け”独特の気配……この濃ゆさ、冷たさは、間違いなくクライブだ。
バレン自身も“闇溶け”をし、暁前の暗い闇に溶け込んだ。
………そして、城からだいぶ離れた沈黙の森の真ん中で、彼を見つけた。
“闇溶け”を半分解いた状態で、森の中を音も無く疾走するクライブの隣りに並んだ。
「よぉ、クライブ。…お疲れさん……と言いたいところだが…………………こりゃ何の騒ぎだ。…………押してはいけないボタンでも押しちまったか…?」
「………」
クライブはなびく白髪の隙間から、その虚ろな瞳でバレンを一瞥したが、無言で走り続ける。
後ろにはベルトークの姿もあった。
無口な男であることは重々承知だが、こんな時までだんまりを決め込まなくてもいいではないか。
バレンはムッとし、眉をひそめたが…………………その視線は、一瞬であるものに注がれた。
………無言で疾走するクライブが脇に抱えたものを、じっと見詰め………呟く。
「…………おい。……………………………………その子供は何だ……」


