亡國の孤城 『心の色』(外伝)


「村長に取り次いで頂けるように伝えてきました。急ぎ呼んでくるので、村の中にお入り下さいとのことです」

「そうか。…しかし、いきなり大荷物を積んだ馬車を通す訳にはいかないな…」

「とりあえず、積み荷は置いておきましょう。中に入れるのは顔合わせの後にして………何よりもまずは、代表者のリスト様が先頭に立って入る事が先決ですからね」

「それもそうだな」

恐らく、そんなに間が空かない内にやって来るであろう村長と合間見えるべく、この一行の代表格であるリストは土埃を払って軽く身形を整えた。

静かに停車した数台の馬車の傍らを歩き、村の入り口へと向かうリストの目に…ふと、何故かこちらに引き返してくる兵士の姿が一人。

それが誰なのか一瞬で理解すると同時に、リストは首を傾げながら自然と歩く速度を緩めた。
道案内役として行列の先頭にいた筈のその人物…ダリルは、村に背を向けて真っ直ぐこちらに引き返しているではないか。

必然的に歩み寄る形となった互いの距離が本の数歩というところで、訝しげにリストの声が掛けられる。



「…何だ?どうして戻っているんだ?お前もそのまま中に入ればいいじゃないか」

そう言って村を指差すリストだったが、当のダリルは無表情の一瞥を寄越すや、その横をスルリと通り過ぎていく。そのまま傍らで停車している馬車に寄りかかると、何とも暇そうな様子でビーレムを撫で始めた。
ブルル、と若干嬉しそうな馬の鼻息が漏れる。



「…挨拶なら代表者のあんたとそこの兵士さんくらいで充分なんだから、別に僕が今入る必要は無いでしょ。……僕は馬車を見ているよ。入るのは、積み荷を運び込む時でいい」


顔合わせとか超面倒臭いよねー、と最後は本音で切り捨てるダリルに、兵士は苦笑いを浮かべ、リストはこめかみに小さな青筋を一瞬浮かばせつつ眉を顰めた。


「………呼んだら直ぐに馬車を通せよ………道案内だけで役目が終わると思ったら大間違いだからな…」

「無駄口叩いていないでさっさと行きなよ」