「何と言うか…想像していたのより、随分と小さい村なんだな…」
「近隣の村の中で、よく戦火を免れたものですね。…ある意味、小さい事が功を奏したのかもしれませんよ」
「………そういうものか?…とにかく、中に入らないことには何も始められないな」
ダリルの指示通り、幾つもの荒廃した獣道を曲がりに曲がって進んだ先には、背の高い針葉樹林の群れに開けた場所が広がっていた。
日を遮る木々のせいなのか、全体的に薄暗い…所々禿げた平らな土地の奥に、村らしき光景があった。
組み合わさった痩せた丸太と、隙間に詰め込まれた土と藁の簡素な壁がぐるりと小さな村を囲んでいるが、普段城壁を見慣れているリスト達からすれば、それはあまりにも頼りない…村を守る壁としての意味をなさないただの境界線に見えた。
家畜を逃がさぬ様にする分には事足りているかもしれない…と頭の隅で呟く中、家畜は疎か、本来聞こえてくる筈の人の賑わいというものが無いことに気が付いた。
多数の人の気配は、ある。だがそれだけで、まるで葬式でも行われているのかと思う程である。
…周囲の廃村とは違い、戦火を免れた要因は、このネガティブな村独特の雰囲気にもあるのだろうか。
…しかし何はともあれ、夜道かよと突っ込みたくなるくらいに暗い森を抜けてようやく辿り着いたのだ。ぼんやりと村を眺めに来たのではない。仕事をしにきたのだ。
一同、即座に私情を引っ込め終えると、リストの指示で兵士等は再び歩を進めた。
行列の先頭にいた兵士が一足先に村へと駆け寄り、これまた簡素で歪な村の入り口へと足を踏み入れて行った。
乾いた口を開いた村の入り口には、村人らしき男が一人…恐らく見張りの人間が佇んでおり、数台の馬車の行列を引き連れた兵士を見るや驚いた表情で深々と頭を下げていた。
二言三言会話を交わすと、村人は村の奥へと走っていく。同時に、兵士はリストの元へと駆け寄ってきた。


