亡國の孤城 『心の色』(外伝)


空っぽの胃袋を満たした後、兵士達はそれぞれの仕事に一斉に戻っていく。
割り振られた仕事は多種多様で、今一番人手が必要なのは街の建築物や橋の復旧作業だ。各所から有能な大工を呼び集め、彼等の指示を受けて仕事にかかる。
一般国民と兵士が互いの知恵を交換し、同じ丸太をせーので抱える光景は、以前までなら考えられないものだ。頭から汚い泥を被ってしまえば、皆ただの同じ人間だと改めて気付かされる。

当初は身分に関わらず協力し合うという事に、互いに違和感を覚えていたが…今ではあまりにも馴染みすぎて、どうして違和感を覚えていたのかさえ思い出せない。
そんな変化が、嬉しくて仕方無い。




ほとんどの兵士は師団に配属され、各師団長の命令に従事していたが…実のところ、ダリルはまだどの師団にも配属されていなかった。それはイブも同様で、どうやら女王陛下…もといローアンがこの二人の配属に待ったをかけているらしい。
二人共、元々が色んな意味で他人とは違うという事もあるのだろうが、アレスの使者で第四部隊として昔から彼女の下にいた自分達を、ローアンはそれまでの様な一兵士としておくつもりは無いらしい。

イブ本人は知らないだろうが、実は今後の彼女の処置は既に決まっているとか。
配属は同じ軍部だが、確か特務師団とかいう特殊な師団だとか…小耳に挟んだ気がする。
多分、彼女の様な暴れ馬がその実力を存分に発揮出来るものに違いない。


(…騎士団の隊服って、何でこんなに面倒臭い着方なんだろう…)

大勢の兵士達が行き来する大広間の真ん中を、ダリルは誰一人とぶつかることなくスイスイと人混みを掻き分けていく。

ダリルが不快そうに襟元やら裾を摘む、今現在着ている服は国家騎士団の隊服だ。緑と白を基調とした裾の長い隊服は、一般人からしてみれば一度は着てみたいと憧れる服なのだそうが…残念ながら、機能性を重視するダリルからすれば少々着にくい服でしかない。

アレスの使者であった頃に着ていた灰色の隊服の方が身軽に作られていて、着やすかったなぁ…と溜め息を吐いた。